短冊と言えば、七夕で願い事を書くために使用するというイメージをお持ちの方が多いでしょう。実際にはそれ以外にも、歌会などで短歌や俳句を書いたり、書道で文字を書いたりするために使用されることもあります。
短冊は、何気なく文字を書くものではなく、本来きちんとした書き方があります。特に短歌や俳句では、これらのルールに則った書き方を求められることが多いです。
ここでは、短歌や俳句を短冊に書くときのポイントをご紹介します。
短冊を知る
まずは短冊とは何かを知りましょう。短冊とは、細長く切られた紙や木のことを指します。短冊はもともと「短籍」という名前で、奈良時代では物書きをするための小さな紙のことをこう呼んでいました。短冊に歌を書くようになったのは平安時代で、それが一般的になったのは鎌倉時代であると考えられています。
室町時代になるとサイズや様式が異なった短冊が登場し、身分によって使う短冊が決められていました。また江戸時代以降は文字だけでなく、絵や詩などを書くこともありました。
現在は七夕で笹に吊す短冊が一般的となっていますが、本来短冊とは俳句や短歌を書くような厚い紙のことを指しました。日本では古くから使われてきたもので、前述の通り、書き方には一定のルールがあります。
短歌を短冊に書くときのポイント
短歌を短冊に書くときには、3つのポイントがあります。これらは古くからの日本の短冊を書くときのルールであり、基本的にはこれを守って書くのが慣例になっています。
書き出しは上から3分の1の場所から
これは俳句でも短歌でも同じですが、短冊の基本的なルールとして、短冊を上3分の1ほどの位置から書き始めるというものがあります。正確には短冊を3つに折ったときに、1番上の折り目に第1句の1字目が重なるように書きます。また、短冊を4等分(折り目を3つ付ける)して、その1番上から書き始めるという説もあります。
空いている上部にはタイトルを書きますが、基本的にはタイトルは歌を書いた後に書きます。筆に墨を付ける場所も決まっており、初句、3句目、5句目を書く前に付けるのが習わしです。
他詠の場合は半字下げる
短歌では自分の作った歌ではなく、他人が詠んだ歌や古い歌などを書くこともあります。自分が詠んだ歌の場合、2行目は1行目より高くならなければ問題ありませんが、他詠の歌の場合には4句目の始まりである2行目を半字ほど下げて書きます。
また、他詠の場合には5句目の終わりに、自分の名前にプラスして「書」や「かく」と入れます。名前のことも考慮して、下が詰まりすぎないようにバランスよく文字を配置するようにしましょう。
ときには現代風な書き方も
短冊に書くときにはいくつかのルールがあるとはいえ、現代ではこれにこだわらない書き方もされています。本来は上3分の1から書き始めるものをあえてそれをせずに書いたり、上の句と下の句を短冊の上段と下段に分けて書いたりする方法もあります。
なお、書家が書く場合には基本的にタイトルがないため、必ずしも上記のルールに従う必要はありません。ときには習わしとは違う、新しいやり方をしてみるのも楽しいかもしれません。
俳句を短冊に書くときのポイント
俳句を短冊に書くときには、短歌を書くときとまた違ったポイントがあります。こちらもポイントを3つにまとめました。
基本は一行書き
俳句を書くときは、基本的に1行で書きます。ただし1行で収まらない字数の場合には、2行にわたっても問題はありません。
こちらも短歌と同じように上3分の1から書き始めるのがルールですが、実際にはこのルールを無視したものも多く残っています。墨は第1句と、第3句の前で付けるのが基本です。
余白や文字の流れにも気を配る
俳句は基本的に1行書きですが、場合によっては2行や3行にすることもあります。このときに大切なのが、余白の取り方や文字の流れです。文字の大きさや、文字と文字の繋がりを意識して、短冊全体がまとまって見えるように配慮して書きましょう。
本来は左下に書く作者名を右下に書いたり、あえて左から右に文字をずらしたりと、さまざまなやり方をしてみるとオリジナリティあふれる短冊になります。文字の変化と統一感を出すことがポイントです。
作者と筆者
俳句は基本的に、句の最後に作者の名前を書き、古歌の場合には裏面に筆者の名前を書きます。しかしこれも統一されているわけではなく、筆者の名前を表面に書き、作者の名前を裏面に書く場合もあります。このときは短歌と同じように、筆者は名前の後に「書」または「かく」と記します。
また、短歌の場合は本名を書きますが、俳句の場合は雅号を書くのが習わしです。なお、基本的に印は不要です。書く場所は、前述のように全体のバランスをよく見て、それに配慮して決めましょう。
普段何気なく見ている短冊ですが、実際には上記のようなルールがあります。次回から短冊に短歌や俳句を書くときには、これらを守って書いてみましょう。