書道談話/依田草榮先生

書道談話 東京書道教育会 指導顧問 依田草榮先生

東京書道教育会では通信講座の添削指導や、通学部「東京書芸学園」の授業を指導力豊富な先生方にご担当いただいております。
今回は、各分野の先生方にお伺いした書道に関するお話を第5週目に掲載いたします。

今回は、通信講座「すらすらボールペン字講座」の手本執筆や、通学部の「ボールペン字クラス」でご指導いただいております当会指導顧問の依田草榮先生です。

先生が書道を始めたきっかけ

小学低学年の頃、一番仲の良い友人に誘われて、書道と珠算教室に通うことになりました。特に興味があって始めた訳ではなく、遊びの延長でしたが、大きな字を書くのが楽しく、友人が辞めてからも通い続けたので、きっと性に合っていたのでしょう。ただ当時は、はっきりと『〇×』の結果が出る珠算が面白く、書道より夢中になっていた記憶があります。

父が伯母に宛てたハガキ

中学進学を機に、その後暫らくは学業に専念しておりましたが、ある日、伯母が黄ばんだハガキを持って来てくれました。それは若くして亡くなった私の父が伯母宛に書いたものでした。

懐かしく思うとともに、その文字の素晴らしさに感嘆しました。それは草書を交えた文書で、私には実に達筆に見えたのです。父と過ごした時間は短く思い出も少なかったのですが、このハガキを通して父を身近に感じることが出来ました。
そして、父のような文字を書けるようになりたいと思い、『書道』をまた学ぼう…と決心いたしました。

友人と父へ感謝

以来数十年経た現在は、珠算で培った暗算力はすっかり衰えて役に立たなくなってきましたが、『書道』はまだまだこれからです。学ぶべきことの多さをますます感じております。そして、『書道』を通じて、大勢の方とお会いすることができ、充実した日々を送っております。
筆を持つきっかけになった友人に、そして父に感謝してこれからも精進いたします。

ホームページに掲載されている先生の座右の銘「日々是好日(にちにちこれこうじつ)の由来について教えてください。

東京書芸学園の講師として歩みだして間もない頃、受講生ではありましたが人生においては大先輩の方から、自筆の色紙を頂きました。色紙には『日々是好日』と書かれており、裏には中国唐時代雲門文偃(ぶんえん)禅師の語、意味は「毎日毎日が平和な良い日であること」との添え書きがありました。

その後間もなく、その方は残念ながらご病気でご逝去されました。当時、講師として経験も浅く、不安気にしていた私に、励ましの言葉を遺してくださったように思われ、私の心に残る一語となりました。さらにこの語の深い意味を知り、なお一層心に留まり、日々の指針として座右の銘といたしました。

今を素直に大切に

「毎日が良い日である」のは誰でもが望むところですが、そうはいかないのが世の常。

晴れの日ばかりではなく、雨の日も風の日もあるように、楽しいことばかりでなく、さまざまなことが起こりますが、今日という日は二度と来ないのです。『日々是好日』には、どのような日もかけがえのない一日なので、今を素直に受け止め、「雨も楽しもう、寒さも味わおう」という意味がありました。

今なお、なかなかその境地にはたどり着けませんが、過ぎ去ったことなどにくよくよせずに、今を素直に受け入れて『日々是好日』になるように、私のかけがえのない一日を悔いのないように大切に生きようと思っています。

ペン字作品の魅力を教えてください。

ペン字作品が展示されている書展は珍しく、東京書道教育会・東京書芸学園の特徴の一つかと思います。ペン字作品の魅力は、つけペンによる線の美しさに代表されます。

私自身も常々、足を止めて観てくださるような魅力のある作品を書きたいと、目標にしているのですが、なかなか思うようにいきません。次回は、次回こそは、と思うことしばしばです。しかしその気持ちが上達への一歩と考え、挑戦し続けています。

料紙や表具選びも楽しみの一つ

自らの力不足を補うため、料紙や表具の力も借りようと、題材にあった色・大きさの料紙を探します。逆の場合もあり、気に入った料紙を見つけてから、その紙に合った題材を探すこともあります。
料紙・題材・構成がぴったりと合った時は嬉しく、気持ちよく書くことができるのです。更に表具の助けを得て、見違うほどに変わることが多々あり、書展会場で表具された自分の作品を初めて目の前にする時のドキドキする気持ちも楽しいものです。

持っている力以上に上手く書こうなどと力んで失敗したこともあります。ペン先に集中して無心に書けた時、納得いく作品になります。平常心で今出来ることが表現できれば最高です。

Work of Yoda teacher

つけペンによる依田先生の作品

依田先生に通信講座「すらすらボールペン字講座」の学習内容について、各巻の要点を列記していただきました。

1巻ひらがな編
7つの上達ポイントでひらがなをマスターします。応用として、二字熟語や短いことばを字粒や中心を揃えて書くことや、横書き・縦書きの違いを学びます。
2巻カタカナ編
ひらがなと違うカタカナの特徴を学びます。併せて、数字・アルファべットも学びます。
3巻漢字編
実用的な行書の形を学びます。総ての漢字を学ぶのは大変ですが、少ないポイントを習得して、多くの漢字に応用することができます。
4巻文章
ひらがな二文字・三文字を続けて書くのが連綿。連綿を交えて書かれた手紙文は一味違います。ひらがなと漢字の調和も学びます。
5巻手紙・ハガキ編
年賀状・暑中見舞いなどの実用書やはがき・封筒の宛名書きの上手な収め方のコツを学びます。手紙文など少し長い文章にも挑戦します。
6巻ビジネス・暮らし編
履歴書やのし袋・芳名簿など、職場や家庭でよく使う文字や書式を学びます。筆ペンやサインペンなどさまざまな用具を使えるようにします。
参考手本集
主な姓や名前・地名や手紙文、はがき文など豊富な例文が大いに役立ちます。

ビジネスでも、日常でも、よく使用されるボールペンですが「ボールペンの持ち方」を教えてください。

ボールペンの持ち方

食事の時を思い出して、箸を動きやすく軽く持ち、そして二本のうち親指の根元の方を抜き取ってください。残った一本がペンの持ち方です。

To have two chopsticks

箸のように二本持つ

Pull towards the base of the thumb

親指の根元の方を抜く

正しい持ち方は余計な力が入らず疲れづらい

人差し指をペンの前面に、中指の先の左側と親指の腹の三点でペンを持ち、手のひらに小さな卵が入る位の空間をつくるように薬指・小指を中指に軽く添えた形になっているか時々確認してみましょう。

How to hold the pen

ペンの持ち方

紙面とペンが接する角度にも気をつけましょう。角度は用具によって違います。
ボールペンはボールが滑らかに回転するように、軸を少し立てて(60~70度)書きます。
万年筆やディスクペン・つけペンは軸を少し寝かして(40~50度)書くと、ペン先の弾力で線に太細の表現が出来ます。
筆ペンは軸を立てて書くことがポイントです。

正しい持ち方が《美しい文字》への一歩です。
子供の頃からの習慣で…と諦めずに、是非挑戦してください。

手紙の書き方について教えてください。

手紙の書き方

手紙には決まった書式があり、親しい友人は別として、ビジネスや目上の人に対しては、書式にそって書くのがマナーです。

手紙は次の4項目で構成されています。

  • 前文   … 頭語・時候の挨拶など
  • 本文(主文)
  • 末文   … 終わりの挨拶・結語
  • あとづけ … 日付・差出人氏名・受取人氏名(敬称)

頭語・結語はセットになっていますので、正しく知って使いましょう。

  • 「拝啓」と「敬具」 … 一般的で多く使われる
  • 「前略」と「草々」 … 前文を省略するとき
  • 「拝復」と「敬具」 … 返信のとき
  • 女性は結語を「かしこ」にしてもよいです。

本文(主文)は前文の続きではなく、改行してから書き始めます。本文が終わり末文にはいるときも改行します。

あとづけは文字の大きさや書き収める位置に注意しましょう。まず、日付を書き、次に差出人氏名を下のほうに書きます。受取人氏名は上のほうに少し大きめに書きます。敬称は「様」が一般的です。

手紙で一番大切なことは、相手に自分の気持ちを伝えることです。昨今パソコンで作成することが多いですが、自筆の手紙は間違いなく伝わることと思います。

How to write a letter

手紙の書き方解説

依田先生、ありがとうございました。

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